ブランドはいくつかの機能を持ちます。効果的にブランディングをするにあたっては、自社、あるいはクライアントの戦略や強み、競合の質や数、市場の動向(ニーズや規模)なども考慮した上でこれらの機能を理解し、ブランディングを行う必要があります。
出所表示機能
誰によって提供されている商品・サービスなのかということを明確にすることで、購買に当たっての意思決定を行いやすくなります。
同様の性能・機能を持つ2つの製品があるとします。片方はよく見知っているメーカーのもの、もう片方は聞いたことがないメーカーのものだとしたら、前者の方が選びやすいはずです。製品の価格が高くなればなるほど慎重に選択しますので、よく知らないメーカーの製品を買いづらくなります。
品質表示機能
ブランド名により、商品・サービスの品質やそれによって得られる価値などを判断できるようになります。
例えば、ある制作会社が士業向けにWebサイトと名刺の制作をパックにした「士業向けパック」というサービスを提供しているとします。それに満足している場合、「士業向けパックAdvanced」という別のサービスがリリースされた際に「士業向けパック」への満足感から「士業向けパックAdvanced」に対しても「士業向けパック」同様、あるいは同様以上の付加価値が得られるだろうと判断します。逆に「士業向けパック」に対して不満足感を得た場合は、「士業向けパックAdvanced」に対しても低い付加価値しか得られないだろうと判断します。
制作にかかる費用が大きいため、売上の見込みが立てやすいという理由からゲームや映画においては商品タイトルを過去のものと統一し、シリーズとして公開することがよくあります。顧客の側からすると過去のものと同等(以上)の品質であると想定できるため、購入に繋がりやすい、つまり安定した売上が見込めるということです。
宣伝広告機能
日本のメーカーによってリリースされた製品と中国メーカーによってリリースされた製品とでは、同様の製品であっても抱くイメージには違いがあるでしょう。このように、ブランドに対するイメージを向上させる効果や認知度を向上させる宣伝効果を得られます。
例えばA社の商品をずっと愛用している人は、A社とB社から同程度の機能・性能をもった商品がリリースされたとしても、A社商品が自分に合っていると認識している、あるいは愛着を感じているなどの理由によって、迷うことなくA社の商品を選択するという具合です。
資産価値機能
ブランドそのものが資産価値をもっていて、企業の収益向上に貢献するという機能です。ブランド認知、知覚品質、ブランドロイヤルティ、ブランド連想などから構成されます。
ブランド認知
ブランドをどの程度知られているかということと、どのようなイメージを持っているかどうかです。ブランド認知は深さ×広さで構成され、深さとはどれだけ強く認知されているか、広さはどれぐらいの人に認知されているかということになります。
画像処理のソフトを出しているメーカーといえば?と質問をされたら、おそらく大勢の人はAdobe社の名前が思い浮かぶのではないでしょうか?このように、何かのきっかけで想起してもらいやすい状態が深く認知されている状態です。
大勢の人にカメラメーカーといえば?とアンケートを取ったとします。たくさんのメーカーがありますが、CanonやNikonの名前を挙げる人は多いでしょう。このように多くの人に想起してもらえる状態が広く認知されている状態です。
購買の意思決定において、顧客の心の中におけるブランドの強さは非常に重要な要素です。商品・サービスを知らなければ候補にならないのは言うまでもありません。あるいは、商品・サービスを知っていたとしても意思決定の際に思い起こしてもらえなければ候補にもなりません。印象が薄ければやはり選んでもらいにくいでしょう。
知覚品質
ブランドの品質、機能、性能、イメージに対して、顧客がどのように知覚しているかが近く品質です。あくまでも顧客がどのように認識をしているかということであって、実際の品質、機能や性能、イメージではないところに注意してください。
広告代理店からいつもポスターのデザインを発注されるのは、自分のクリエイティブのクオリティやセンスを認められていると思っていたとしても、本当は広告代理店側にとって無理を聞いてくれる、都合が良い相手だから発注しているのかもしれません。
このように、商品・サービスを提供する側が顧客に対して知覚して欲しいイメージは、必ずしも顧客が知覚しているイメージと一致するとは限りません。双方の知覚のずれはターゲットと想定している顧客層を実際の顧客にできない可能性が高まります。また、提供する商品・サービスに対する満足度の低下、商品・サービスを提供している側の従業員の仕事に対する満足度の低下にもつながります。
ブランドロイヤルティ
ロイヤルティ(Loyalty)とは英語で忠誠のことです。つまり、特定のブランドに対しての忠誠度、愛着度、どれだけ強い愛顧をもっているかということです。いわゆる「○○信者」というような顧客がブランドロイヤルティが高い顧客ということです。
ブランドロイヤルティが高い顧客は、他のブランドに目移りしづらくなります。そのため、必然的に売上に貢献する優良顧客になり、ロイヤルティが深まると、口コミなどで未開拓の顧客に対して自発的に宣伝を行うこともありえます。
ブランド連想
ブランド名を聞いたときに連想する事柄(製品のカテゴリー、品質、価格、利用状況、など)の結びつきのことです。購買・検討の意思決定時に大きな影響を与えます。
例えば、ペンタブレットといえば…で思い描くメーカー名はありませんか?そのメーカー名を聞いた時に知覚しているイメージや思い出す商品やその価格帯などが連想されるはずです。
DTPのソフトといえばこれしかないというように、ユニークで、強く連想されるほどブランド価値は高くなります。
理解度Check
以下の文章は正しいでしょうか?もし間違っているならどこが間違っているでしょうか?
ブランドのもつ機能とは、顧客に対して良いイメージを与えるものである。
- ×不正解
- 良いイメージだけではありません。過去の経験から悪いイメージを抱くこともありえます。