価格(Price)

事業をやっている以上は提供する付加価値に対価を払ってもらう必要があります。顧客視点で見ると、顧客が支払うのは商品・サービスの代金だけではありません。商品・サービスを探す手間、店舗まで行くための時間や手間など、購買に関する全ての手間や時間もコストに含まれます。

新規参入者だから他より安めの価格設定で、あるいは失注が怖いので安めの見積で…なんてやってないでしょうか?最初の内は知名度も低いのですからなかなか仕事がないのが当たり前で、価格が高いから受注できないのではありません。安めの価格設定をする事業者には、提供している商品・サービスの質ではなく、価格しか見ないような顧客しか寄り付かなくなって、一生懸命頑張ってもちっとも儲からないということになってしまいます。

安い価格で商品・サービスを提供するためには、大量に原材料を仕入れて、人件費の安い国で同じものを大量生産して製造コストを下げて…のように、安く提供できる仕組みが必要になります。そういった仕組みを作ろうとすると、必然的に企業規模が大きくないといけません。つまり、個人でやっているクリエイターや規模の小さな制作会社は、安い価格で商品・サービスを提供する体制を作れないので、薄利多売の値付けというのは本来は不可能なのです。

クリエイターの場合、制作にかかる費用のほとんどは人件費だと思いますが、安く提供するためにはこの人件費を削るということになります。つまり、自分たちの利益を削って、自分たちが損をしながら仕事を受注する、実際にこういった受注の仕方をしているクリエイターや制作会社は多いのではないでしょうか。これでは会社を維持・存続させることはできません。

価格設定

価格設定にはコストに対して利益を加算する方法と、需要に重点を置いて価格を設定する方法、競合の価格を比較対象として自社の価格設定を行う方法などがあります。

いずれの方法で価格設定をしたとしても、支払った料金以上の満足度が得られれば、顧客は納得してくれますし、得られなければ納得してくれません。

同業他社より高い付加価値の提供や差別化をすることによって、高い報酬を得て、価格にのみプライオリティを置いている顧客とはお付き合いを避ける、というのが規模の小さい事業者の価格に対する基本的な考え方ということになります。

コスト志向の価格設定法

実際にかかるコストに対して必要な利益を加算して価格を決める方法です。顧客に受け入れられるかという点をクリアできれば、一定の利益が確保できます。

需要志向の価格設定法

顧客が知覚する価格を基準に価格設定をする方法です。類似商品や代替商品の価格帯を参考にしたり、市場調査によって知覚する価格を測定したりする方法があります。価格を先に設定するため、その価格で利益が出るように費用を抑える必要があります。

競争志向の価格設定法

競合他社などが提示している実勢価格を基準に価格設定をする方法です。消費者が価格差に敏感に反応する製品ではこの方法が採用されることが多いです。

提供する価値、納期と価格のバランス

主に製造業において重視されているQCDという視点があります。「Quality(品質)」「Cost(費用)」「Delivery(納期)」の頭文字を取ったもので、この3つはトレードオフの関係にあります。つまり、品質を良くしようとしたらコストが高くなり、納期も長くなります。コストを安くしようと思ったら品質を下げたり、納期を伸ばしたりして対応しようということになります。納期を短くしようと思ったら品質を落としたり、前出残業などで対応したりするからコストが高くなります。

ご経験がある方も多いと思いますが、顧客は無茶を言いがちです。特にお付き合いが長くなる程、要求が厳しくなります。ですから、料金を下げるように要求されたら損が出ないように納期を伸ばしてもらう、標準よりも高品質なものや短納期を要求されたのであれば、増加コスト分を価格に反映させるなどして、損が出ないような料金設定をする必要があります。

理解度Check

以下の文章は正しいでしょうか?もし間違っているならどこが間違っているでしょうか?

価格は顧客が支払っても良い最大の価格と、付加価値を提供する側の必要最低金額の間で決まる。

○正解
単価を上げるためには顧客が支払っても良い最大額を上げる必要があります。そのためには、それだけの付加価値を提供しなくてはいけません。

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